アパート経営をしている人のなかには、入居者の自殺等の事故に遭遇することがあります。アパート経営者としては事故物件になった後、どのように対処すべきか悩まれている人も多いと思います。
そこで今回の記事では、事故物件になった場合の対処法について解説していきます。
事故は説明義務がある
自殺のような事故は、心理的瑕疵に該当します。瑕疵(カシ)とは通常有すべき品質を欠くことを言います。心理的瑕疵とは、取引物件で過去に自殺や殺人事件、火災、忌まわしい事件、事故などがあり、心理的な面において住み心地の良さを欠くようなものを指します。
物件に心理的瑕疵がある場合、貸主は借主に対して予め事故の内容を告知すべき義務を負います。
この義務は、民法第1条第2項に定められている信義則上の義務が根拠になっています。契約当事者は、相手方に不測の損害を及ぼさないよう、信義に従い誠実に行動すべき義務を負います。
そのため、貸主はまず自殺のような心理的瑕疵は告知しなければいけません。
次に、その瑕疵を知った不動産会社も、入居者に対して賃貸借契約時の重要事項説明において告知をしなければならないという義務を負います。つまり、貸主も不動産会社も、知りえた心理的瑕疵については告知する必要があります。
10年くらいは説明が必要
では次に、いつまで告知をしなければならないかが問題となります。それには過去の裁判事例を参考にすることが重要です。
大阪高等裁判所で昭和37年〈1962年〉6月21日に出された判決では、「死後7年を経過していること、首吊り自殺のあった座敷蔵は既に取り除かれて存在しないことなどの事情を理由として瑕疵にはあたらない」という事例があります。
一方で、横浜地方裁判所で平成元年〈1989年〉9月7日に出された判決では、「マンションのベランダで首吊り自殺後、6年3ヶ月間生活した後に建物を売買した事案」で瑕疵を認めた事例も存在します。
そのため、一般的には事故後10年程度は、その他の事情と合わせて瑕疵と認定されてしまうおそれがあるということになります。ただし、この年数については様々な見解があり、決まりもありません。
事故の少ない田舎の物件であれば比較的長く説明が求められ、都心部の物件であれば短くても良いという判断もあります。事件の忌まわしさや人口密度等によって、事故の風化の度合いは異なるため、説明期間は個別に判断する必要があります。
事故物件となったときの対処法
事故が発生してしまうと説明義務を負う必要があるため、借手がなかなかつかず、空室率は上昇してしまいます。
最悪の場合、対処法としては物件の売却というのもあり得ます。ただし、事故物件は売却価格も下がります。
事故物件を高く売却するには、取り壊して売るとか、事故後数年経ってから売る等の対処法が一般的です。いずれにしても損害はあるため、値引きして早めに売却してしまうというのも一つの手かもしれません。
未然に防ぐ対策
事故を未然に防ぐには、入居審査によって事故を起こす可能性の低い人を入居させることです。それでも完全に事故を防ぐことができません。
しかしながら、甘い審査であらゆる人を入居させるよりは、審査を厳しくするだけでもかなり事故を防ぐことができます。
最近では、借主への精神的負担の軽減から、連帯保証人を不要とするオーナーもふえましたが、あえて連帯保証人を課すことで、入居者をフィルタリングするという考えもあります。
貸主からすれば、連帯保証人は身元保証人のような人なので、連帯保証人を立てられるような人であれば、少し安心という判断もできます。
まとめ
以上、事故物件にあったときの対処法について見てきました。事故が起きたら貸主には説明義務が発生します。事故を防ぐためにも、入居審査等はしっかりと行うようにしましょう。