国土交通省が発表した2016年1月1日時点の公示地価は、全国平均(全用途)で前年比0.1%上昇し、2008年以来8年ぶりにプラスに転じました。
実は土地には、4つの「価格」があるのをご存知でしょうか。今回は、不動産投資で知っておきたい4つの「地価」について解説します。
4つの土地の価格、その違いはどこに?
4つの地価とは、公示地価、基準地価、相続税路線価、固定資産税路線価です。
経済学では「一物一価」といい、同じ財やサービスの価格はひとつに決まると言われますが、不動産は「一物四価」です。
土地の価格(地価)を知ることは、不動産の購入や売却の検討をしたり、銀行の融資を受けたり、固定資産税や相続税を計算したりする時に役立ちます。4つの価格は全国ベースで公表されていて、全国地価マップ(http://www.chikamap.jp/)で簡単に調べられますので参考にしてください。
これら4つの違いは、一見分かりにくく感じられるかもしれませんが、ポイントは評価の「方法」「目的」「水準」の3点にあります。
1. 評価方法が違う
4つの地価は、評価の方法によって2つのグループに分けられます。「地価グループ」と「路線価グループ」です。公示地価と基準地価は地価グループ、相続税路線価と固定資産税路線価は路線価グループにあたります。
両者の違いは、地価グループの価格は特定の調査地点(ポイント)を評価し、路線価グループの価格は土地が面する道路を評価するという点です。
地価グループの調査地点には、用途や面積などを勘案して地域の代表的な土地が選ばれます。それに対して、路線価グループでは、用途や面積に関わらず、同じ道路に面する土地の価格が一様に決まり、次に間口や奥行の長さなど、その土地の個別性を考慮して評価されます。
なお、地価グループの公示地価と基準地価は、基本的にほぼ価格が変わりません。価格基準日が半年違うぐらいです。公示地価と基準地価を兼ねている調査地点が一部あり、そこでは半年ごとの変化が分かります。また、通常「路線価」と言うと、相続税路線価を指すのが一般的です。
2. 評価の目的が違う
公示地価と基準地価は、主に一般の土地取引の指標とするためのものです。
一方、相続税路線価は「相続税」と「贈与税」の課税額を決定するため、固定資産税路線価は「固定資産税」と「不動産取得税」の課税額を決定するためのものです。
不動産の売買なのか、それとも相続税の計算なのか、その目的によって指標とする地価は異なるということです。
3. 評価水準が違う
上述の4つの地価は、評価水準が異なります。具体的には、公示地価や基準地価を100とすると、相続税路線価は80程度、固定資産税路線価は70程度です。
上述の「地価グループ」の調査地点は「路線価グループ」に比べて少ないため、調査対象の土地の近くに調査地点がない場合は、この評価水準をベースに相続税路線価を0.8で割り戻したり、固定資産税路線価を0.7で割り戻したりすることで、公示地価や基準地価ベースの価格が推測可能になります。
4つの地価について整理すると、下表のようになります。
名称 | 評価 方法 |
評価 水準 |
評価の目的 | 価格の 基準日 |
公表者 | 根拠 |
公示地価 (地価公示) |
地点評価 | 100 | 一般土地取引の指標と公共用地の買収価格の基準 | 1月1日 (毎年) |
国土交通省 | 地価公示法 |
基準地価 (都道府県地価調査) |
100 | 7月1日 (毎年) |
都道府県知事 | 国土利用計画法 | ||
相続税路線価 | 路線評価 | 80 | 相続税・ 贈与税の課税 |
1月1日 (毎年) |
国税庁 | 相続税法 |
固定資産税路線価 | 70 | 固定資産税・ 不動産取得税の課税 |
9月 (3年毎) |
総務省・市町村長 | 地方税法 |
「実勢価格」について
もう1つ、忘れてならないのが実勢価格です。
実際の不動産取引は実勢価格(相場)で行われます。国などが決めた上述の4つの公的価格とは別のものです。ただ、すべての不動産取引記録が調査・公開されているわけではなく(むしろ実勢価格が分かる方が稀です)、明確に公表されている公的価格を使う方法が、地価を知るのには一般的というわけです。
なお、国土交通省の土地総合情報システムにある「不動産取引価格情報検索」では、物件を特定できなない形で不動産の取引価格が公表されています。細かいエリアごとに取引時期や物件の種類で検索できるので、実勢価格の参考になるでしょう。(http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet)
まとめ
不動産投資では、物件価格に対する利回りばかりに目が行ってしまい、どうしても土地と建物を合わせたグロスの金額に注目しがちです。しかし物件の土地価格を理解することは建物の価値の理解となり、建物の消費税額や減価償却費を推測し、キャッシュフローへの影響を理解することになります。
また、2016年の地価公示結果の概要では、商業地について「金融緩和による法人投資家等の資金調達環境が良好なこと等もあって、不動産投資意欲は旺盛であり商業地の地価は総じて堅調に推移している」とあります。
実勢価格(相場)と公示地価とを比較してみることで、知らずに高値で掴まされるリスクも減らせるのではないでしょうか。