いよいよ念願の賃貸物件オーナーに!そうともなれば、きっと心も躍ることでしょう。しかし、その喜びだけで終わってしまうと、後々痛い目に遭うかもしれません。
本稿では、初心者物件オーナーにぜひ知ってもらいたい心構えと、重要なキーワードについて説明します。誰もが最初は初心者です。初心者物件オーナーとして心に刻みたいキーワードから見ていきましょう。
経営に役立つ5つのキーワード
それぞれの立場や環境によって優先度は変化しますが、次のキーワードはあらゆる賃貸物件の経営に必須となります。「税金」、「減価償却費」、「修理・修繕」、「マーケティング」、「キャッシュフロー」のキーワードを意識した賃貸経営を心がけましょう。
賃貸経営は長期間にわたります。オーナーは経営者として研究を積み、技量を高めていく必要があります。不動産経営のキーワードは多々ありますが、上記に挙げた5つは、経営を安定化して収益を向上させるための重要なポイントです。その他の重要なキーワードに関連するスキルも身につけられるよう、日々努力を続けていく心構えが大切です。
1.賃貸物件で課される税金
「購入」「保有」「売却」という不動産のライフサイクルにおいて、不動産に対してさまざまな税金が課されます。「賃貸経営を永続させる」という視点でいうと、賃貸物件から得られる賃料と所得税対策が重要になってきます。
日本の所得税法では、所得を10区分に分けて計算します。最終的に各所得を合計し、総所得金額を算定する仕組みです。賃貸物件などの不動産の貸し付けから生じる所得は「不動産所得」に区分されます。
不動産所得の計算方法は、以下の計算式で求められます。
【不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費】
そして「必要経費」には次の5項目があります。
【a.固定資産税 b.損害保険料 c.減価償却費 d.修繕費 e.その他の費用】
賃貸経営者には、サラリーマンを兼業する大家が少なくありません。この兼業大家の主な所得は、会社から得られる給与所得です。前述したように所得税は、各区分の所得を個別に計算し、合算して総所得を求めたものに所定の税率を乗じて、所得税を算定します。
不動産所得の計算式では、必要経費に「減価償却費」という項目があり、減価償却費は実際の支出を伴わない経費ですが、計上することにより不動産所得が(計算上)赤字になるケースがあります。兼業大家の場合、給与所得と赤字の不動産所得を合算することで総所得を小さくできます。結果的に、所得税額を少なくすることができます。
給与所得と他の区分の所得を合計する際、赤字の所得で給与所得を相殺することを「損益通算」といいます。
2.収益を左右する減価償却費
賃貸物件とは、土地、家屋、照明・エアコンなどの付帯設備、門塀などの構築物から成ります。土地は経年で物理的な価値が減じることはありませんが、家屋などの価値は年月の経過とともに劣化します。このような資産を「減価償却資産」といいます。
減価償却資産は、長期間でその価値が徐々に減じます。そのため、購入した年に全額を経費計上することは実態に即していません。所定の使用期間で徐々に経費計上する方法が合理的です。これが「減価償却」であり、減価償却資産を取得するのにかかった金額を、所定の方式で各年分の経費に配分します。
なお、減価償却費は経費計上されますが、実際には支出のない費用です。結果として、不動産所得は(見かけ上)小さくなり、所得税額は減ります。しかし、冒頭にも申しあげましたが、賃貸経営は長期間にわたりますので、見かけ上の経費で得られた利益を無駄にしてはいけません。得られた利益で建物の修理や修繕に備え、経年劣化しても物件価値が落ちないようにすることが、賃貸経営を安定させます。
3.価値の保全を図る修理・修繕
すべての賃貸物件は経年劣化します。そして、経年劣化は賃料低下と空室リスクを高めますので、それを防止するのが修理や修繕です。修理や修繕は計画的に実施しないと、その効果が低減してしまいます。計画的に行うためにはもちろん資金が必要で、減価償却費から得られた利益を蓄積して備えます。
4.市場ニーズを把握
今後の日本は、人口減少が本格化します。不動産投資においての人口減少は賃貸物件の借り主の減少を意味し、オーナーはこれまで以上に機敏に市場ニーズを把握することが求められます。そのため、これからの賃貸経営には、マーケティングセンスがより必要です。最も大切なのは物件のロケーションですが、そのエリアの特性、想定する顧客層と物件のマッチングも大切になります。
5.最終目的はキャッシュフローの安定化
「キャッシュフロー」は、さまざまな視点で複数の意味を持つ言葉ですが、賃貸物件では最終的に手元にお金が残らないと経営の存続が難しくなってきます。列挙したキーワードはすべてキャッシュフローの確保を目指したものですから、これらを心構えとしてキャッシュフローの安定化を最終目的にすると良いでしょう。
初心者物件オーナー向けに心構えと重要なキーワードを説明しましたが、将来の物件買い増しや専業大家さんを目指す人は、初心者物件オーナーから上級者物件オーナーへと成長できるように、日々研究を積むことを忘れないようにしましょう。