不動産投資を全額自己資金で行えば、リスクは大幅に抑えられます。しかし、投資規模で考えると、小さな物件になる場合が多いでしょう。たとえば、中古マンションの区分所有であれば、数百万円で投資が可能な場合もありますが、収益の規模からいえば、1棟物件での投資を考えたいものです。
1棟物件の売買価格は数千万~数億円単位になります。そうなると、何はともあれお金が必要になります。また、資金が多いほどより実りの大きいマンション投資が可能です。このように、自己資金と融資を組み合わせて投資規模とリターンを大きくすることを、「レバレッジ(テコ)効果」と呼びます。
今回は、金融機関からより多額の融資を受けるためのポイントを調べてみました。
金融機関の不動産投資用ローン
まずは、金融機関の代表的な不動産投資向けローンを調べてみました(2018年3月15日現在)。
1. 日本政策金融公庫
言わずと知れた政府系金融機関です。地域振興や起業のバックアップなどが目的なので、一般の金融機関では融資審査の厳しい物件でも融資してくれます。この金融機関の最大の特長は、4,800万円を限度額とした無担保融資の制度があることでしょう。
2. SMBC信託銀行
500万円~1億円の範囲で不動産投資ローンを扱っています。融資額は対象不動産の「購入額の80%」か「評価額の80%」のいずれかで、低いほうが選択されます。前年度の年収(自営業の方は申告所得)が、700万円以上で安定した収入があることという条件があります。
3. りそな銀行
いわゆるメガバンクの次に位置する都市銀行です。個人での投資も不動産管理法人名義も対応可能で、融資枠の最高限度額は3億円となっています。首都圏と関西圏に支店が多く、その地域での不動産投資では大いに役立ちます。
一般的な融資額の相場とは?
融資額に「相場」はあるのか?という点ですが、不動産投資への融資は投資家本人の属性だけでなく、投資物件の属性によっても融資額が異なります。融資の実績は個々の事例の積み重ねであり、いわば結果論です。
そのため「これが相場だ」とまでいえるのか不明点はありますが、年収1,000万円クラスで1億円程度の物件への投資が可能といわれています。相場としては年収の10倍程度というイメージでしょう。ただし、注意点としてローンの残債がある場合は、融資枠から残債分が控除されます。
金融機関は何を見ているのか
不動産投資に関する融資は前述のとおり、「物件」と「本人」の属性で審査が行われます。通常の住宅ローンで購入する住居は、本人が住むだけですからそこから収益はありませんが、不動産投資では購入物件が賃料を稼ぎ出します。したがって金融機関は物件の属性に注目します。空室リスクと滞納リスクに対する耐性を、どの程度備えているかを評価します。
まず、物件の属性ですが、不動産の価値はその所在地に大きく影響されます。また、物件の仕様や近隣住人の属性との相性も重要です。以下に重要ポイントを示しましょう。
・ 公共交通機関との距離
・ 商業施設(コンビニ・スーパーなど)との距離
・ 公共施設(病院・図書館・役所等)との距離
・ 近隣住民との相性(収入・家族構成とのマッチング)
・ 嫌悪施設の有無
・ 住居性と賃料の釣り合い
次に、融資を受ける本人の属性です。不動産投資は長期間にわたる投資になります。長期間の地道な努力を続け、約定どおりに返済ができる人物であるかどうかを金融機関はチェックします。一般的に融資を受けやすい人物の特徴は次のとおりです。
・ 資産がある
・ 借金がない、または少ない(無駄使いがない)
・ 誠実な人柄(返済に遅れが発生しない)
頭金はどの程度あればいい?
物件の購入でしばしば問題とされるのは、「頭金(自己資金)はどれだけ必要か」ということです。頭金を用意しない「フルローン」や「オーバーローン」というものもあります。前者は物件の購入価額までローンを引き出した場合、後者は購入価額に加えて種々の手数料・税金までもローンでカバーした場合をいいます。これらの場合、果たして安定的な不動産投資は可能なのでしょうか。
不動産投資では、空室リスクと滞納リスクが経営を大きく揺さぶります。大多数の投資家は、投資物件購入に際してローンを組んでおり、家賃収入からローンの返済資金を捻出しています。したがって、空室や滞納は返済リスクを高めます。頭金・自己資金が多ければ多いほど、リスク耐性は高まります。
言い換えると、頭金の準備に長期間を要するようであれば、その物件は投資対象として適正ではないのかもしれません。必要最小限の頭金を用意し、残額をローンでまかなえるような物件が、投資対象になり得るということです。
フルローン、オーバーローンを対象外とすると、一般的に金融機関が融資する限度額は、購入価額の70~80%です。また、不動産の購入に際しては、登録免許税、登記費用などの手数料が必要になり、さらに不動産取得税がその後課されます。このような税・手数料などを考慮すると、頭金などの自己資金は購入価額の30%程度を用意するといいでしょう。
マンション1棟の不動産投資を自己資金だけで行える投資家はごく稀です。多くの投資家は、金融機関から資金を借り入れて、レバレッジ効果を狙います。ただし、億単位の融資となると、金融機関の審査もシビアになりますから、本稿で紹介したような点に注意しながら金融機関との交渉に臨み、ぜひ満足できる融資額を獲得できるように準備しましょう。