不動産投資には、アパートやマンションなどの投資物件を購入する「直接の不動産投資」と、J-REITなどの不動産投資信託を購入する「間接の不動産投資」という2つに大別されます。本稿では、これらのメリット・デメリットを比較検討し、不動産投資の儲けとリスクを評価していきます。不動産投資で儲けるには、どちらのスタイルが自分に合っているのか考えてみましょう。
2つの不動産投資
かつての不動産投資は、多かれ少なかれ、ある程度のまとまった資金が必要でした。一棟ビルやマンションなら億円単位の資金が必要となり、マンションの区分所有やアパートなら数千万円という費用を必要としました。
しかし、金融緩和が進み、2000年には「投資信託及び投資法人に関する法律」が改正され、不動産などの有価証券以外への投資が可能となりました。これにより不動産投資法人が組織され、広く投資家から資金を集めて、ビルや商業施設などの収益物件を所有し、その不動産からの収益を投資家に分配(分配金)するという仕組みがつくられました。
米国では不動産への投資の仕組みとして、「REIT(Real Estate Investment Trust)」という投資信託が1960年代に開発され、日本の不動産投資法人の仕組みは「J-REIT」と呼ばれています。J-REITは、資金を集めるために小口化した投資証券を発行します。投資家は上場不動産投資信託証券を購入することで、不動産投資法人を通じて、間接的に不動産に投資することになります。
J-REITは証券取引所に上場しているため、株式投資と同様に日々の売買が可能です。これにより、従来の不動産では困難だった「投資資金の小口化」と「低流動性」が解決されました。近年大きな広がりをみせるクラウドファンディングもこの「間接の不動産投資」の一形態です。
その一方で、物件を購入する「直接の不動産投資」については、マンションや一棟アパートの中古市場の整備が進んでいます。中古マンションなどの区分所有であれば、新築マンションの区分所有よりもさらに小口での不動産投資が可能です。
近年では、インターネットで投資用中古マンション情報に容易にアクセス可能となっています。購入金額と情報の両面から、中古マンションの区分所有による不動産投資がしやすい環境が整ってきており、副業としてのマンション投資ブームを後押ししています。
不動産投資を多面的に評価
不動産の直接投資と間接投資は、投資行為の実働という視点で考えると、全く別の行為になります。両者を比較するため、7つの評価項目を設定してみました。
1. 小口化(少額投資の可能性)
不動産投資に限らず、すべての投資行為には投資の最低限度額があります。「1万円から」「30万円から」「100万円から」「500万円から」など、額が低ければ低いほど、参入ハードルは低くなります。物件そのものを購入する直接投資よりも、REITのような間接投資のほうが参入の障壁ははるかに低いでしょう。
2. 手間(管理の負担の大きさ)
投資証券の購入は、株式や債券、投資信託を購入するのと同じ感覚で行えます。手間があるとすれば、何を購入するかの分析です。一方で直接投資の場合、マンションの区分所有でも、サブリース(一括借り上げの家賃保証制度)でも、管理会社との交渉などの手間を要します。また、物件の管理を投資家が直接行うには、専業大家にならないと対応が難しいでしょう。
3. リスク
賃貸物件を直接所有すると、時間軸でリスクが発生します。わかりやすくいえば、保有が長期に及ぶほどリスクが高まるということです。日本では少子高齢化に伴い、人口減少がはじまりました。賃貸経営には逆風が吹きはじめましたが、REITなどの間接投資は市場で自由に売買できるので、その時々の判断で機敏に動くことができます。
4. リターン
「ハイリスク・ハイリターン」という言葉どおり、自分自身で不動産を購入する直接投資のほうが、間接投資よりも得られるリターンは大きくなります。
5. 流動性(換金性)
REITは上場しているため、流動性に関する問題はほとんどありません。一方の直接投資は、不動産を売却する際、売り主の都合だけでは成り立たず、希望するタイミングでの換金も難しいでしょう。急ぎの場合は、かなりの安値で売却せざるを得ないこともあります。
6. 満足感(所有に対する満足感)
不動産は「資産の王様」といわれるように、不動産を所有すると大きな満足感が得られます。周囲の人たちからも「資産家」との評価を受け、一種のステータスともいえます。間接投資にはないメリットかもしれません。
7. 保有コスト
不動産は、悪くいえば「税金の塊」です。保有しているだけでも、固定資産税・都市計画税が課税されます。さらに、「購入」「保有」「売却」という不動産のライフサイクル全般で課税されます。
手持ち資金が少額で、不動産管理に手間がかけられない人には間接投資がおすすめです。多額の資金を動かすことが可能で、不動産市場に精通している人ならば、直接投資が良いでしょう。これらの中間に位置する人は、前述の評価項目を参考にして自分自身で比較・検討してみましょう。
これまで、不動産は多額の資金が必要で流動性に劣ることから、手が出しにくい金融商品でした。しかし、その問題をJ-REITなどの投資証券は解決してくれています。投資初心者でも比較的参入がしやすいので、J-REITで経験を積んだあとに、実際の賃貸物件の購入に進むというステップを踏むのも良いのではないでしょうか。