新築マンションの値上がり傾向が続いた2017年。その高騰を受けて中古マンションの人気が上がり、価格も上昇傾向にあります。
そのため個人では、都心に手頃な価格の投資用マンションを見つけることがなかなか厳しい状況が続いています。ここではマンション価格の状況を確認するとともに、都心で投資用マンションを購入することの良し悪しについて考えてみます。
首都圏の新築マンションは値上がり続くも、2018年1月は大幅ダウン
首都圏マンション市場は、現在どうなっているのでしょうか。不動産経済研究所のデータによると、2017年12月まで連続して値上がりが続き、一戸あたりの分譲価格は平均で6,000万円を超えました。一般的な家庭が購入できる金額を超えたことにより、販売成約数は減少傾向にありました。
ところが2018年に入って大きな変化が起こりました。2018年1月、市場は一転して大きな下落傾向を示したのです。しかし、これだけをみて「マンション価格の下落がはじまった」と考えるのは早計です。これにより、加熱しすぎた市場に冷水を浴びせることになるのか、それとも単なる偶然なのか、これ以降の動向に注目が集まっています。
PER(収益性)は年々悪化
それでは投資用物件として見たときに、新築マンションの収益性はどうでしょうか。結論からいえば、残念ながら収益性が年々悪化していることは否めません。
株式投資で株価の収益性を示す「PER(Price Earnings Ratio)=株価収益率」という指標がありますが、不動産においても購入価格を年間家賃で割った数値をPERとして表すことがあります。たとえば、5,000万円の新築マンションから年間250万円の家賃収入が得られれば、そのPERは5,000万円÷250万円=20となります。これはその物件を買えば20年で購入費用を回収できるという意味です。
不動産専門のデータ会社が2016年に発表した首都圏の新築マンションのPERは28超えの非常に高い数値となっています。2014年と比較すると3ポイント以上の上昇でした。2016年で28超ですから、2018年現在が30超だったとしても価格上昇が続いてきたことを考えると全く不思議はありません。
なおこのPERは、あくまでも家賃収入だけで導き出された数値であり、維持費などは考慮していません。つまり、購入資金を回収できる年数はさらにかかるということです。もちろん、実際には経年に伴う家賃下落も織り込む必要があるので、さらにPERの数値は厳しいものになると考えるべきです。
今は「買い時」ではないの?!
PERは家賃収入(インカムゲイン)をもとに算出された数値です。PERの上昇は利回りの悪化を意味します。と、ここで「インカムゲインで回収できない分はキャピタルゲインでカバー」と考える人がいるかもしれません。確かにここまで都内23区では地価・マンション価格ともに高騰が続いてきましたが、新築マンションには新築プレミアムの上乗せがあります。新築で購入しても、売却する場合は中古となりますからプレミアム分の目減りを覚悟しなければなりません。
また前述したとおり、2018年1月は新築マンションの価格は下落に転じています。今後も下がり続けるのか、それとも一過性のものなのか判断は難しいところですが、もし現在のマンション価格が高値のピークだとしたら、いわゆる「高値づかみ」となり投資するタイミングではないでしょう。
中古マンションの動向は?
こうした状況で注目すべきは、中古物件や都内以外の物件でしょう。たとえば、神奈川県内のマンションの成約率はいまだ好調です。購入者は物件価格と内容が見合っていると判断していると考えられます。PERに関しても、神奈川県内では良い数値を示している駅(エリア)もあります。
前述の市場動向では、東京都内の中古マンション価格に頭打ちの傾向(前年比+1.3%)が見えています。市場が落ち着きを取り戻している一方で、隣接3県の中古マンション市場は値上がり傾向(神奈川5.1%、埼玉5.3%、千葉4.4%)が続いているという対象的な結果を示しています。
値上がりを期待して神奈川や千葉の中古マンションを買うのか、頭打ち後の価格下落を期待して都内の中古マンションを様子見するのかは、個人によって見解が分かれるところでしょう。
ここ数年のマンション価格の高騰により、投資物件の収益性や利回りが数年前よりも悪化している点は否めません。しかし、2018年に入ってマンション価格の潮目が変わる兆しが現れ、また都内の賃料相場も緩やかな上昇傾向にあります。収益性の計算はしやすい状況にあり、購入後に大幅に計画が狂うということはなさそうです。いずれにせよ、常に市況を確認しながら不動産投資を検討するようにしましょう。