入居者から退去の連絡を受けても、大家さんはそれを残念がっている暇はありません。なぜなら、次の入居者の募集を開始し、空き室の状態をなくすことを考えなければならないからです。家賃を下げずに、いかに次の入居者を入れられるか悩ましいところです。
しかし、退去後はある意味、「部屋をより魅力的なものにする」チャンスです。そこで今回は、原状回復工事の機会を利用しての、物件価値を高める方法について考えてみます。
まずは壁紙、床シートの変更をして魅力的に
原状回復の基本は、ハウスクリーニングです。キッチン、浴室、トイレなどの水まわりを中心にきれいに清掃します。次は壁紙やカーペットですが、これらはニオイを吸い込みやすく、日光や家電製品で焼けてしまうこともあります。多くの場合、張り替えが必要になりますが、その際にスタイリッシュなデザインに変更してみてはいかがでしょうか。それだけでも部屋の雰囲気はずいぶん変わります。
無線LAN導入でネット無料物件に
賃貸住宅情報サイトなどで最も人気のある賃貸物件用の設備が、インターネットを無料で使える無線LANです。現在はパソコンを持たない若者がふえてきており、スマホやタブレットでネットに接続し、コンテンツを閲覧するケースがふえています。
たとえば、動画などの大容量コンテンツを個人の契約回線で利用していると、あっという間に利用量の上限に達して接続スピードが遅くなるため、満足に動画が見られなくなってしまいます。そのため、賃貸物件で利用できる無線LANに接続して大容量コンテンツを楽しむといった使い方が一般的です。
部屋に無線LANを引くには業者の工事が必要です。入居時でも可能ですが、家具の移動など手間がかかるため、入居者の募集時に行うと良いでしょう。集合住宅用であれば月額3,000円程度で利用が可能です。業者によっては賃貸物件用にもっと安いネット接続環境を用意しています。また、月額費用は家賃に反映させることで回収が可能です。
引越し初日からネットに接続できるのは、一人暮らしに慣れていない大学生や新社会人にとってはうれしい設備です。無料ネット回線は、入居者の満足度を高めるとともに、空室リスクを抑えることに役立つでしょう。
ペット可の物件に
最近、需要がふえている賃貸物件の種類として、自由にペットと暮らせる「ペット可」物件があります。ペット可物件を専門に取り扱う賃貸情報サイトもあり、人気を集めているほどです。また、室内飼育が前提であることから、犬よりも小型で吠えることもない猫の人気が高まっています。
ただ、単純にペットを飼ってもいいという物件では魅力がありません。ペットと入居者が快適に生活できるように、原状回復の機会を利用して、大幅にリフォームしてみてはいかがでしょうか。室内は爪や牙で引っかき傷が付くことも多いため、壁や床の素材には気をつけましょう。また、ニオイにも気を配る必要があります。
鳴き声を出すこともあるため、防音対策もすると良いでしょう。猫を飼えるようにした場合は、運動するためのキャットタワーも必要になります。単なるペット可物件ではなく、ペット専用物件として部屋を生まれ変わらせ、家賃を上げても賃貸需要があるようにしていくのも一つの手です。物件が老朽化して競争力が下がっていると感じたら、ペット専用物件にするチャンスともいえます。
カスタマイズ物件でワンランクアップ
賃貸物件の多様化に伴い、自分が好きなようにカスタマイズできる物件を求める人もいます。大家さんはスケルトンに近い状態で部屋を貸し出し、入居者は室内を自由にリフォームできる物件が注目を集めているのです。
退去されたら、一気に壁紙や床を剥がして、スケルトンに戻してしまうほうが費用は安く、手間がかからないこともあります。完全に入居者が内装を自由にカスタマイズできるという方法は、原状回復工事費を負担してもらうことで物件をワンランクアップさせているといえます。
ここまで、退去の度に必要になる原状回復工事を利用して入居者を獲得する方法について考えてみました。原状回復工事で物件価値をアップさせる上記方法を、一度試してみてはいかがでしょうか。