不動産投資には金融機関からの融資が不可欠です。
不動産投資は、積極的に良い条件で融資を受けて投資用物件をふやし、高い収益を上げることが成功するうえで大切といえるでしょう。そのため、自己資金をふやすのも重要ですが、効率の良い投資をしていくためにも、いかに金融機関から好条件で融資を引き出すのかを考えるべきです。
ところが、2017年ぐらいから「不動産投資家に対する金融機関の融資が下りにくくなっている」という声が聞かれるようになりました。なぜ今、金融機関が個人投資家への融資を渋りはじめたのでしょうか。不動産投資における融資について考えていきます。
赤字経営の地方銀行がふえている!?
不動産投資の金融機関として、メガバンクではなく、金利が低めの地方銀行やネットバンクを利用している人も多いのではないでしょうか。ところが、2017年夏に地銀の経営状況について、「地銀64行のうち7割強の46行が実質赤字に陥っている」との報道があり大きな注目を集めました。
金融機関が赤字を脱するには、融資額をふやし、利益を確保していかねばなりません。しかし、人口減少が急速に進む地方の経済は停滞化し、多くの地銀は現在厳しい経営環境に置かれています。
個人投資家への融資は、法人に対する融資よりも「リスクが高くなる」と判断されやすいようで、その状況を受けてか、個人向け投資ローンの融資は全般的に鈍化の傾向にあるようです。このため、現在も積極的な姿勢を維持している銀行と消極的な姿勢になってきた銀行との見分けがつきやすくなってきました。
ここ数年の状況が「特別」だった?!
そもそもここ数年の融資状況は、加熱しすぎていたという見方もあります。不動産投資が加熱した背景には、次のような理由が挙げられます。
・日銀のマイナス金利政策による金融機関の融資緩和
・相続増税とその対策としてのタワーマンションや一棟アパートへの投資増
・ITの進歩で不動産投資に関する情報が入手しやすくなった
実際、金融庁が発表した調査結果を見ると、個人向け融資がここ数年、右肩上がりで増加してきたことがわかります。
しかし、金融庁や日銀が過熱気味の不動産投資向けの融資に対して警鐘を鳴らし、その影響が2017年あたりから出てきたようです。そして、2017年前半にピークを迎えた個人投資家向け融資は、沈静化しつつあります。
日本で「不動産市場の崩壊」と聞くと、かつての「バブル経済崩壊」が思い出される人が多いのではないでしょうか。少々、過熱気味だった地方の一棟アパート投資や都心のタワーマンション建設などが一息ついてきたのは、景気の低迷というよりも「正常化」してきたといえるのかもしれません。
融資が受けられる金融機関は……
融資が鈍化してきているとしても、不動産投資家は金融機関から融資を受けないことには投資がはじまりません。狙い目は、圧倒的な融資実績を残している地銀といえるでしょう。融資の下りやすさだけでなく、審査のスピードも早いと評判のところもあります。絶好の投資物件を見つけても、資金調達に時間がかかってしまえば、ほかの誰かに取られてしまうかもしれません。スピードも不動産投資では大切な要素です。
また、自分が住んでいる地域、投資物件がある地域の地銀や信用金庫も、金融機関としての検討範囲といえるでしょう。地域に密着する金融機関は、判断基準として「属性」のみならず人間関係なども重視しています。金融機関から融資を受けられるかどうかは、極端な話、担当者次第という面もあるようです。
個人向け不動産投資ローンは、一時期よりも融資が下りにくい状況になってきたことは間違いないでしょう。しかし、「属性」が良く、資産や頭金が用意できる投資家への融資には、大きな変化はまだ見られないようです。「持つ者」と「持たざる者」の格差が拡大しつつありますが、差が大きくなる前に、まだ資産をあまり持っていない人は、まず地元金融機関とのパイプを強固にすることからはじめてみてはいかがでしょうか。