これまで「単身者向け住宅」というと大学生や若年の独身サラリーマンなど、若者を対象としたものが中心でした。しかし、少子高齢化社会の現在、独身の高齢者が増加しています。加えて、子どもたちの独立後に、夫婦でそれまで住んでいた一戸建て住宅を売り払って利便性の良い二人暮らし向けマンションに住み替えるという人もいるようです。
こうした住宅事情の変化に対応するため、今「高齢者向け賃貸住宅」の需要が拡大しています。今回は高齢者向け住宅の現状と、賃貸経営における戦略を考えてみましょう。
高齢者向け住宅に求められる設備とは
高齢者向けの住宅には具体的にどのようなものがあげられるでしょうか。高齢者住まい法が定める「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」では、その登録基準として次の点が挙げられます。
・部屋の広さが25㎡以上
・ガスや水道、電気、風呂などが完備されていること
・バリアフリー対策が行われていること
高齢者の住まいには、日常生活に支障をきたさないよう「段差が少ない」「手すりがある」「床が滑らない」などの配慮が必要です。
しかし、現在、高齢者向け住宅として供給されている物件はこうした基準を満たしているものの、一般の賃貸住宅で備えている物件は多くありません。また、マンションなど大型の集合住宅であれば、毎日相談できる医者や看護師が常駐していること、高齢者同士で交流が楽しめるスペースや設備があることなどが求められることでしょう。
大手不動産デベロッパーが手掛ける高齢者向け住宅
実際に供給されている高齢者向け住宅として、郊外を中心に大手不動産デベロッパーが手掛けるマンションが広がっています。高齢者は一人で外出することが少なく、都心に出かける機会もあまり多くないので、できる限り物件価格が抑えられる郊外は需要が高いのです。ただし、「駅近」のものが多く、子どもや親族が訪ねやすいという点が重視されています。
また、マンション全体を高齢者専用とし、健康状態について相談できるスタッフが常駐、食事なども提供してくれる物件もあります。健康維持のためのリクリエーションはもちろん、時には入居者同士でバス旅行に出かけるなどの“人生を楽しむ”ためのサポートまで行っています。ただ、入居には多額の費用がかかり、毎月の支払額も数十万円単位で必要になります。
また、富裕層の中には相続対策になることから高齢者向けマンションを購入して移り住み、本人が亡くなった後は、そのマンションを資産として遺族に残す人もいます。
不動産投資家ができる高齢者向け住宅対策
「マンション一棟は購入できないが、アパート一棟ならば買える」という個人投資家は、高齢者向け住宅対策としてどんなことができるのでしょうか。
効果的な集客対策として、付近の施設との連携が重要です。高齢者やその親族が一番気にするのは健康問題です。特に持病を抱えている人ならば、何か起きた時にすぐに相談できたり、医療スタッフに駆けつけてもらえる環境が必要で、そのためにはアパートの近くに病院があり、行きつけの病院とすぐ連絡が取れるなどの連携体制が重要です。部屋の広さやバリアフリー、エレベーターなどの設備と駐車場も欲しいところです。
子どもや親族と気軽に連絡が取れ、また健康状態をチェックできるようにIoT設備の導入も検討してみましょう。子どものスマートフォンと簡単に連絡が取れるシステムや、入居者の行動が数日間なかった場合に、自動で親族に連絡が届くシステムがあれば安心です。
高齢者向け住宅は今後追い風になる
高齢者向け住宅の現状と、不動産投資家として、不動産オーナーとしてできることを考えてみました。高齢者向けの物件にするためには、相応の設備投資が必要です。しかし、最近では高齢者向け住宅に対する国の補助制度も整ってきています。また、高齢者には年金などの収入源があるため、家賃滞納のリスクは少ないはずです。何より、高齢者向け住宅は不足している一方で、これから先も高齢者の割合はどんどん高まります。賃貸需要が見込めるターゲットとして、高齢者向け住宅を検討してみるのはいかがでしょうか。