会社の内情というのは外からでは分かりません。儲かっているように見えるのに実は資金繰りが厳しい企業、地味に見えるのに安定感抜群の優良企業など、様々です。見た目と違うという点では会社も人間も同じなのかもしれません。
今回は「地味にスゴイ」会社の一つであるビル持ち会社にスポットを当て、不動産賃貸業とはどのようなビジネスなのかをご紹介いたします。
ビル持ち会社とは
個人でも不動産投資家が増えていますが、不動産賃貸業を「生業」としてやっている会社も昔から多く存在します。いわゆるビル持ち会社です。
不動産賃貸業でも規模が大きくなれば人を雇うことが可能です。都内の一等地に大きなビルを持っていれば、分母が大きいたため稼ぐ賃料も大きくなります。ビル持ち会社もアパートの大家さんとやっていることは基本的に同じです。ただ分母が大きいため、会社組織にすることができるのです。
ビル持ち会社は、往々にして地味です。しかし、社歴の長い会社も多いです。社歴が長いということは長い経済環境の激変にも耐え、潰れなかったことを意味しています。
ビル持ち会社が地味な理由の一つとしては、あまり広告をしないことも挙げられます。逆に言えば、ビル持ち会社は広告をする必要のない会社とも言えます。テナントさえ入居していれば、毎月安定した売上を上げることができ、わざわざ広告宣伝費をかける必要がないのです。
安定した賃料収入があり、利益がしっかり確保できる範囲で人員を雇ってさえいれば、潰れることはありません。人材募集もほとんど行わないため人目に触れる機会も少ないと言えます。
ビル持ち会社の弱点
このように一見羨ましく見えるビル持ち会社ですが、他のビジネスと比べると大きな違いがあります。それは「急拡大できない」という点です。この点は個人の不動産投資家にも共通する部分です。
「急拡大できない」という弱点は、不動産賃貸業というビジネスモデルの本質ですので、個人投資家の方もしっかりと認識しておく必要があります。
ビル持ち会社も破たんして潰れるケースがあります。それは急拡大しようとして借入過多となり資金ショートして潰れるパターンです。会社としての利益は出ているのですが、借入の返済に窮し、黒字倒産を起こします。
拡大が借入過多になりやすい
ビル持ち会社が売上を伸ばすには、他のビルを購入して新たな賃料収入を得ることになります。これを自己資金で行えば問題ないのですが、借入でビルを購入し始めると苦しくなり始めます。
元々、不動産賃貸業は投資額に対しての収益率が低いため、税引後・元本返済後のキャッシュフローに対する利回りが1~2%台というケースも珍しくありません。このような非常に薄利の状態だと、大きな空室が発生するとキャッシュフローが途端にマイナスに転落します。
急拡大することで借入金の返済リスクが高まると、収益が超薄利となり、突然の空室に耐えられません。借入金の元本返済は、経費にはならないため、決算上、利益が出ていたとしても、借入金の返済によって資金が底をつき倒産してしまうのです。
優良なビル持ち会社は、売上拡大や成長戦略も地味なのです。
個人投資家も急拡大は危険
個人投資家の行う不動産投資も、構造的にはビル持ち会社と同じです。たまに個人投資家の方でも一気に不動産を買い集める方がいますが、それは危険な行為です。個人投資家の方も資産規模を拙速に追及すると資金ショートを起こし、破産します。
「細く長く」が不動産賃貸業の基本です。急に太くすると途端に短く終わってしまうのが不動産投資のビジネスモデルです。「地味にスゴイ」投資術を優良なビル持ち会社から学びましょう。