不動産投資をすれば節税ができるという話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。実際に不動産投資することで、所得税や相続税などの税金を安くすることが可能になります。しかし、どうして税金が安くなるのか、仕組みを説明できる人は少ないのではないでしょうか。本稿では、不動産投資と節税の関係を説明して、上手に節税するためのポイントについて紹介します。節税の仕組みを知ることで、不動産投資を通じて賢く節税することができるでしょう。
不動産投資で節税できる税金の種類は?
不動案投資によって節税効果が期待できる税金には、「所得税」「住民税」「相続税」があります。
所得税とは、個人がさまざまな利益をあげたときにかかる税金です。所得税の特徴は、利益の金額が大きくなればなるほど税率が高くなるというもので、これを累進課税といいます。一方で、法人が利益をあげたときに支払う法人税は税率が一定になるので、この税率の違いを利用することも節税のテクニックになりますから、後に説明します。
住民税は、都道府県民税と市町村税の総称です。一定額を支払う均等割と、利益をあげた場合にだけ支払う所得割から成り立っています。所得割の税率は、所得税と異なり一定で、
相続税は、被相続人(亡くなった人)の相続財産を相続人(亡くなった人の配偶者や子どもなど)が相続したときにかかる税金です。相続税の特徴は2つあり、1つ目の特徴は控除額が大きいことで、相続財産の金額が大きくなければ税金はかかりません。もう1つの特徴は、所得税のように累進課税になっていることで、相続財産の金額が大きくなればなるほど税率も高くなってしまいます。そのため、相続税を節税するためには相続財産の金額を小さくすることが重要になるのですが、この際に不動産投資が利用できるので、後に説明します。
所得税・住民税の節税
不動産投資は、不動産に投資して利益を得るという事業です。賃貸用の不動産を購入して賃料収入を得たり、値上がりしそうな不動産を購入して購入時よりも高い金額で売却したりすることで利益を得ます。
会社員や公務員が給料をもらって働くことは事業ではないので、仕事で自分の携帯電話を使うことがあっても、その電話料金は経費にはなりません。しかし、不動産投資では事業のために必要になったお金を経費として計上することができます。例えば、賃貸用のアパートを維持するために不動産会社に支払った管理費や固定資産税、減価償却費などです。
経費の中でも、特に節税のためのポイントになるのは減価償却です。これは、事業のために利用している資産の価値が、時間の経過とともに下がっていくことを経費として計上する手続きのことをいいます。不動産の場合、土地は時間が経過しても価値は下がらないので対象になりませんが、建物は老朽化していくので減価償却の対象です。
減価償却の計算方法は法律で決まっています。例えば、3,000万円かけて建築した木造アパートの場合、耐用年数は22年なので、3,000万円を22年で割った140万円弱を毎年の経費として計上可能です。この140万円は、帳簿上は経費になりますが、実際には手元から出ていったお金ではありません。それなのに、140万円にかかる税率分の税金が実際に安くなるのです。
相続税の節税
不動産投資によって、相続税を大きく節税することが可能です。相続財産の金額は、相続財産1つ1つに金銭的な評価をつけていき、それを合算することで算出します。その際に、現金や預貯金はそのままの金額で評価され、株式などの有価証券は市場があればそこでの取引額に従って、市場がなければ同業他社との比較や純資産などによって評価されます。いずれの場合も、市場で売った場合の相場どおりの金額になるといえるでしょう。ところが、不動産については、市場価格にかかわらず国税庁が発表している路線価と呼ばれる数字を基準にして評価を計算します。路線価に基づく評価は、実売価格の80%程度になることを想定されているのですが、都心部などの地価が高い地域では、市場での相場の半額以下になることもあります。
例えば、相続人が1人しかいない場合を考えると、相続財産が2億円の現金のみの場合には、約5,000万円の相続税がかかってしまいます。ところが、この2億円で相続税評価額が1億円になる不動産を購入していた場合には、相続税を約1,200万円まで安くすることができます。
会社設立で高まる節税効果
不動産投資を個人で行なうか法人で行なうかによっても節税効果は異なります。個人で不動産投資した場合の所得税率は累進課税となりますが、法人の場合の法人税率は一定です。そのため、不動産投資によって得られる利益が多く、個人で営んだ場合の所得税率が、法人を設立した場合の法人税率よりも高くなる場合には、法人を設立したほうが有利になるといえるでしょう。法人税率は法人の資本金などによって変わってきますが、資本金1億円以下の場合、所得の800万円以下の部分には19%、800万円を超える部分には23.2%の法人税がかかります。
一方で、個人の所得税率は、課税所得が695万円以上・900万円以下なら23%、900万円を超えるなら33%となります。そのため、課税所得が900万円を超えるならば、法人の設立が有利になると考えることができます。
ただし、課税所得の計算は、給与収入と不動産収入を合算して、扶養控除などの控除額を引いて計算することに注意が必要です。また、法人を設立すると、法人住民税や確定申告の手間などの維持コストが発生することにも留意すべきです。そして、不動産収入部分を切り離して計算しても、給与収入部分については引き続き所得税がかかることも忘れてはいけません。不動産収入部分を法人化したことによって得られる節税メリットが維持コストを上回らなければ、法人を設立する意味はないといえます。
法人を設立したほうが有利になるかどうかはケースバイケースですが、それでも給与収入と不動産収入の合計が1,300万円を超えた場合には、法人税率のほうが低くなることから、法人化を検討するべきでしょう。
不動産投資で節税する際の注意点
不動産投資の目的はあくまでも利益を出すことですから、節税を意識しすぎることにはデメリットがあります。
賃料収入が多くても経費が多ければ利益は出ないことになり、節税につながります。経費の中でも、減価償却費については実際には持ち出しが発生しないので、金額が大きければ大きいほど良いといえるでしょう。しかし、節税を意識しすぎて、どうせ利益が出ても税金がふえてしまうのだからと不必要な経費を計上するようになれば、最終的に手元に残るお金は少なくなってしまいます。
不動産投資の利益が出なくなってしまうとさまざまな弊害が生じてきます。現在、どれだけの利益を上げられているかどうかは、不動産投資家としての評価に直結します。利益が出ておらず評価が低くなれば、新たな物件を購入しようと考えたときにも銀行からの融資を受けづらくなってしまうでしょう。また、いざ物件を売却しようとした際にも、利回りが悪い物件として安くしか売れないことになってしまいます。
利益が出ずに、資金に余裕がなくなることも問題です。どんな事業にもリスクはつきもので、不動産も例外ではありません。例えば、入居者が突然退去してしまい賃料収入が下がってしまうリスクや、大地震で建物の修繕が必要になるリスクがあります。これらのリスク発生時に対応するには資金に余裕を持たせることが必要で、それを得るためには利益を出しておくことが求められるのです。
賢く節税しよう!
不動産投資は節税にも役立てることができますが、そればかりに気を取られてしまうと本末転倒な結果になってしまいます。どうすれば不動産収入をふやせるかという視点と、どの部分で節税することができるかという視点の両面から考えることで、賢く節税していくことを心がけましょう。