外国人観光客の急増が止まりません。観光地に足を運べば、場所によっては日本人を上回る数の外国人を目にするようになりました。インバウンド景気も盛り上がっており、民泊などそれを狙って不動産投資するケースもふえています。
ただし、そんな特需の陰では、さまざまな問題も指摘されるようになってきました。インバウンドにより利益を得るためにはどういった工夫が必要なのでしょうか?
盛り上がるインバウンド需要
海外から日本を訪れる観光客が急増しています。JNTO(日本政府観光局)の統計によると、2007年には835万人だったのが、2017年には2869万人と、たった10年で3倍以上に増加しています。
特に近年は増加ぶりが著しく、2016年・2017年と2年連続で前年比2割増を記録しました。外国人旅行者が国内で消費する金額も大きく、2017年の統計を見ると、日本人国内旅行消費額が21兆1130億円なのに対し、訪日外国人旅行消費額は4兆4162億円で、2割超にあたります。
中国人旅行者による爆買いは落ち着いたと言われますが、依然として経済的に大きな規模があり、多くの業種において、彼らの需要が経営の成否に大きく影響するようになりました。
その典型である宿泊業では、多くの地域で需要過多となっており、賃貸不動産の民泊転用で成功する例もふえています。
東京五輪、IRなど後押しする要因も
インバウンド景気がさらに盛り上がるよう、官民あげての取り組みも進められています。2020年には東京五輪が開かれます。これを機に海外から訪れる観戦客は一過性の観光客増をもたらすだけでなく、一定数はリピーターになると期待されています。
2015年にイングランドで開催されたラグビー・ワールドカップ後には、イギリスを訪れるリピーターが増加しました。同様に東京五輪後もインバウンド景気がさらに拡大する可能性が高いというのが一般的な分析です。
2018年4月にはIR(カジノを含む統合型リゾート)を国内に設けるための法案が閣議決定されました。アジア圏にはマカオや済州(チェジュ)島などカジノを観光資源とする観光地があります。日本でIRが導入されれば、カジノを楽しみの一つとする外国人観光客の誘致にもつながり、よりいっそうのインバウンド景気増大をもたらすと期待されています。
地元経済への恩恵には明暗
消費意欲が旺盛な観光客が多数来訪すれば、地域経済には無条件で大きな恩恵があるはずと考えたいところですが、現実には期待を裏切られるケースも見受けられます。
北海道のニセコは、世界屈指のパウダースノーが海外からも高く評価されており、シーズンには毎年多数のスキー・スノーボード愛好家が世界中から訪れます。
ところが、外資が経営するホテルなどに客を取られ、地元のホテルはあまり潤っていないとも報じられています。地域に落ちるはずのお金の多くを地域外から参入した企業が持っていってしまうため、地域経済は意外に活性化されていません。
働き手にとっても問題は深刻です。外国人観光客への対応が求められるため、英語などの語学力がないと、外食店などでも働きにくいのです。そのため、海外から労働者を雇い入れる施設が多く、地域の雇用はそれほど改善されていません。給与として支払われた資金の多くが海外に出て行ってしまうことも、地元では問題視されています。
インバウンドの取り込みには地道な工夫が必要
外国人観光客がふえているからといって、彼らを対象とするビジネスなら簡単に成功するわけではありません。日本文化の体験など、彼らのニーズも急速に変化しており、インバウンド景気を取り込むためにはいち早くそれに合わせることが必須です。
外国人のニーズを日本人が想定するのは難しいため、「売り込みたい」というプロダクトアウトの発想では失敗しがちです。口コミの広がりやリピーターの確保という地道な努力がインバウンド景気を長く活用するカギと言えます。
外国人観光客を主な対象層とする民泊も、地域によっては競争が激化し、明暗が分かれつつあります。成功する条件は一般の不動産投資と似ており、価格や立地が競合物件とシビアに比較されるので、重要なのはコストを抑えた運営や利便性を優先する立地選びといった不動産投資の基本です。
前述のニセコのように、資金力を持つ外資が競争相手となるケースもあるので、そういったリスクも想定して、競合と差別化できるポイントを設けておくことも大切でしょう。
まとめ
海外から訪れる観光客は、宿泊や外食、買い物などを通じて国内経済を潤してくれる存在です。ただし、リピーターがふえる中、市場は急速に成熟しつつあるため、不動産投資の新たな可能性と言われた民泊においても、物件の品質やサービスで選ばれるようになっています。
インバウンド景気を安定的に取り込み続けるためには、突発的な盛り上がりに依存するのではなく、ビジネスの基本を押さえた投資が必須だと考えるべきでしょう。