LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅は、建築・運用・廃棄という3つの段階のトータルで排出するCO2の量をマイナスにできる住まいです。
これまで、運用時のエネルギー収支を実質ゼロにするZEH(ゼロエネルギーハウス)の普及が目標とされてきましたが、地球環境の温暖化が心配される中、国内では2018年度、LCCM住宅の建設に最大125万円という補助金が支給されることが決まりました。
国交省がLCCM住宅に補助金
国土交通省は2018年3月、LCCM住宅に対する同年度の支援制度として、1戸あたり最大125万円(高性能化に要する費用の1/2以下)の補助金支給を発表しました。
国土交通省ではIoT技術の導入や高い省エネ性能を確保などの条件を満たす住宅の供給を支援する活動として「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」を設けてきました。
今回の支援策はその枠組みにLCCM住宅部門を加えるもので、住宅から排出されるCO2の削減を目的として実施されることが決まりました。
「住まいの一生」を通じてCO2排出量をマイナスに
「LCCM」は「ライフサイクルカーボンマイナス(Life Cycle Carbon Minus)」の略で、その名のとおり、住宅のライフサイクルを通じて、排出されるCO2量がマイナスになる住宅を指します。
住宅はライフサイクルの中でさまざまな形でCO2を排出します。建設時には輸送や建築機械の稼働に伴ってCO2を排出しますし、一定年数ごとに行われる改修工事でもCO2が排出されます。
居住に際しても、冷暖房や給湯、照明などのエネルギー使用に伴ってCO2を排出します。ライフサイクルを通じてCO2排出量をマイナスにするためには、さまざまな技術を活用して、住宅の建設・運用・解体・廃棄という一生涯の中で排出される CO2を削減する必要があります。
高断熱でエネルギー使用量を抑制するのに加え、太陽光、太陽熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー利用によって、CO2排出を上回る創エネを実現することが可能です。
そういった技術によりエネルギー使用を抑える住まいにZEH(ゼロエネルギーハウス)がありますが、LCCM住宅は建設や解体によるCO2発生も合算するものです。
住宅にも求められるCO2削減
LCCM住宅が求められる背景には温室効果ガスによる地球温暖化の進行という世界的な懸念事項があります。気候変動や海面上昇、砂漠化などにより今後多くの国や地域で深刻な影響が出るものと考えられています。
2015年にパリで開催された「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」では各国が温室効果ガスの排出量削減について目標を掲げ、合意しました。 同会議において、日本は「2030年度には2013年水準比から26%削減する」という中期目標を定めました。
世界的に約束した目標であり、確実な履行が求められるところですが、東日本大震災に伴う原子力発電所の稼働停止などもあり、現状では実現できるかどうか危ぶまれています。
国内におけるCO2排出量のうち、住宅の建築、改修や運用に伴うものが占める割合は約2割とされています。この2割の多くを占める家庭からのCO2排出量が増加傾向にあるため、住宅における対策が求められているのです。
運用時だけでなく建築・廃棄時のCO2排出も考慮して削減に努めることで、より効果の大きい対策を実現できることから、政府でもLCCM住宅の普及を進める政策に力を入れ始めています。
快適に暮らせて資産価値が保たれる
LCCM住宅は単に環境性能が高いだけでなく、住む人にとっては快適性が高いという利点もあります。高断熱により暑さ寒さを感じにくいのは近年、猛暑の夏や厳寒の冬となることが多い国内において、大きなメリットと言えます。
長寿命化を図る設計なので、資産価値が長く保たれる可能性が高いのも利点です。建築コストは一般の住まいに比べて割高ですが、将来的に大きな資産価値が残ることに加え、補助金の支給や光熱費の削減などを勘案すると、住み心地の良さに対して支払うコストはかなり小さいと考えることもできます。
まとめ
住まいの断熱や省エネ、創エネの技術は急速に進化しています。それに伴って、価格も低下しているので、LCCM化住宅を建てることはコスト的にもそれほど困難ではなくなってきました。
補助金も支給されるので、環境問題に関心のある方にとっては検討してみる価値がありそうです。