個性を大切にする人がふえる中、コーポラティブハウスという選択肢に注目が集まっています。住まいを購入したい人が共同で集合住宅を建てる仕組みで、コストを抑えながら自分らしい住まいを実現できるのが特徴です。
2018年1月からフジテレビで放送されたドラマ「隣の家族は青く見える」でも、コーポラティブハウスが物語の舞台に選ばれました。
注文住宅でもない マンションでもない
あまり聞き慣れない言葉ですが、コーポラティブハウスとは、家を購入したい人が集まって組合を結成し、組合主導で建てる住まいのことを指します。
コーポラティブは「共同の」という意味の言葉で、それにハウスを付けたこの名称は和製英語です。海外では一般的にBuilding co-operatives(共同で建てられた建物)と呼びます。
2018年1月から放送されたテレビドラマ「隣の家族は青く見える」で取り上げられたこともあり、最近注目が集まっています。集合住宅では通常、間取りなどをほとんど自由に選べませんが、集合住宅でありながら一戸建ての注文住宅に近い自由度があるのがコーポラティブハウスの特徴です。
建て方は主に2通り
建て方には主に「企業主導型」と「組合主導型」という2つの種類があります。前者はコーポラティブハウスのコーディネートや企画、建設などを請け負う企業がプロジェクトを立案、会員を募集して建てるものです。
現在、国内で提供されているコーポラティブハウスの大半は企業主導型で、インターネット上にも募集中のプランが多数掲載されています。立地や規模、建物の構造、価格などは提供する企業が決めるため、比較的自由度は低くなります。
組合主導型は、友人や知人、親戚などが集まって組合を結成し、プロジェクトを推し進めるというものです。ある程度気心の知れた人同士が共同で土地を購入し、設計事務所や建設会社と契約を結んでコーポラティブハウスを建てるので、立地などプランのすべてを自由に決めることができます。
最大のメリットは自由度の高さ
分譲マンションの場合、間取りや仕様は通常、デベロッパーが決めます。最近では、部材やクロスなどの色をある程度選べるケースもふえていますが、自由度は大きいとは言えません。
コーポラティブハウスは組合員が主導して住まいを建てるため、間取りや設備、部材などを自由に選ぶことができます。自分らしい住まいを建てたいと願う人はハウスメーカーなどに依頼して一戸建て住宅を建てるのが一般的ですが、土地代など大きな費用がかかります。
コーポラティブハウスは集合住宅なので、土地費用の負担を抑えて、こだわりの住まいを実現することが可能です。費用面ではもう一つ、土地購入費用や建設費などを知ることができるため、コストの透明性が高いという利点もあります。
分譲マンションの場合には、デベロッパーが販売価格にどれだけの利益を載せているのか判断できませんが、コーポラティブハウスなら建築に要する費用を組合員が確認できます。
さらに、入居前から住同士の良好なコミュニティが形成されるのも、コーポラティブハウスならではのメリットでしょう。企業が主導する形式でも、建築段階から何度も顔を合わせ、家づくりという共通の関心事について話をする機会があるので、自然と親しい「ご近所づきあい」ができるようになります。
手間と時間がかかるのがデメリット
利点の大きなコーポラティブハウスですが、デメリットもあります。もっとも大きな問題は、組合員の考えをまとめ、住まいの建築計画を完成させるまでに何度も打ち合わせを重ねる必要があり、時間と手間がかかることです。
また、組合員が途中で脱退したら資金的な問題が発生したり、計画が頓挫したりするケースも見られます。企業主導型の場合には、自分が参加したプロジェクトに人が集まらないと計画そのものが廃止されることもあります。
売却しにくいことがあるのも認識しておきたいコーポラティブハウスのデメリットです。自分らしさにこだわって個性的な住まいを建ててしまうと、同じ好みの買い手を見つけるのが難しいため、なかなか売れなかったり売却価格を低く見積もられてしまったりすることがあります。
まとめ
一戸建ての注文住宅を建てるのには多額の建築費用を要します。もう少しコストのハードルを下げて自由度の高い住まいを実現したいという人にとって、コーポラティブハウスは意義深い選択肢と言えるでしょう。
現在は企業が主導するものがほとんどですが、将来的にはSNSで組合員を募るなど、さまざまな形式が登場することも考えられます。