これまで若者のものと思われていたシェアハウスですが、最近では高齢者の新たな「住」の形として注目されています。安価な費用で住まいを確保できる上、お互いを見守り支援しながら暮らせるなど、シェアハウスならではの特徴には高齢者のニーズにマッチする部分がたくさんあります。
ふえる高齢者向けシェアハウス
シェアハウスは複数の人が1軒の住まいに同居する賃貸住宅です。住人はプライベート空間である自室で寝起きし、リビングやキッチン、風呂、トイレなどは共用(シェア)します。
従来は収入が少ない若者の利用が主でしたが、最近では高齢者を対象とするシェアハウスが増加しています。一般的なシェアハウスとの違いは高齢者の暮らしに配慮したバリアフリー化にあり、階段昇降機やスロープ、各所の手すりなどが設置されているのが高齢者向けシェアハウスの特徴です。
高齢者向けシェアハウスがふえている背景にあるのは、単身で暮らす高齢者の増加です。2015年時点で、65歳以上の高齢者のうち、単身で暮らす人の割合は男性で13.3%、女性では21.1%にのぼります。
男性の8人に1人、女性では5人に1人が孤独感や生活費の確保などの問題を抱えやすい単身での生活を送っており、シェアハウスは単身高齢者のニーズに合う住まいと捉らえられています。
コストを抑えてコミュニケーションのある暮らしを
シェアハウスで暮らす最大のメリットは安価な家賃で住まいを確保できることです。プライベート空間以外は共有するため、マンションやアパートよりも賃料が安く、持ち家のような固定資産税や修繕費もかかりません。
単身の高齢者にとっては孤独感が緩和されるのも大きな利点でしょう。仕事などで社会と関わることが少ない単身の高齢者には人と会話する機会があまりありません。
シェアハウスでは毎日、共用部で同居人と顔を合わせるため、世間話をすることができ、孤独感が軽減されます。また、お互いの安否確認や健康を気遣うなど、高齢者にとって必要な支え合いが自然に生まれやすいのです。
設備やサービスにはまだまだバラつきが
利用者にとってメリットの大きい高齢者向けシェアハウスですが、問題点を指摘する声もあります。経営側から見ると、家賃を低く抑えて黒字を出すのは容易ではありません。
また、法的な基準がないこともあり、施設の品質やバリアフリー化のレベルにはバラつきが見られます。一部には介護サービスを提供する企業がサービス利用を見込んで提供するケースも見られますが、そういったサービスがないシェアハウスでは身の回りのことを自分でできなくなると住み続けるのは困難です。
自身で生活を賄えるうちは暮らせるものの、その先の暮らしが見えなければ、安心して利用できないと感じる人もいるでしょう。
多世代が支え合って暮らす理想も
一方、さまざまな支援策を組み込むことで、そういった問題を軽減しようとする取り組みも始まっています。介護サービスを提供する会社が運営している物件では、ヘルパーの派遣等、サービス付き高齢者住宅のような介護サービスを入居者が利用できる場合もあります。
また、物件の一部を若者の居住スペースとして安価で提供するなどの工夫により、多世代が同居する仕組みを作る、といった将来像を描く事業者もいます。若年層との交流により、「子供や孫との暮らし」に似た楽しみや支え合いを実現できれば、単身高齢者の増加という社会問題に対する一つの答えになるかもしれません。
シェアハウスだからこその可能性には高齢者にとって付加価値となるものが多く、賃貸物件のオーナーにとっても、将来性が感じられる取り組みと言えます。
まとめ
まだまだ黎明期ということもあり、高齢者向けシェアハウスの設備や仕組みには、品質に大きな差が現状見られます。身体の障害や認知症など老いにまつわる問題をクリアして暮らし続けられるかどうかは不明な点もあるため、今後そういった問題への取り組みが充実すれば利用したいと考える高齢者がふえそうです。