分譲マンションの管理は、物件を共有する区分所有者が共同で行います。そのための組織として管理組合を設けるよう区分所有法で定められており、運営は主に区分所有者が持ち回りで担当する理事にゆだねられています。
管理組合の業務は意外に煩雑で、時期によっては理事の負担が増大することもあります。最近ではIT化することで、管理組合を支援するさまざまなサービスが登場しています。
IT化が遅れている管理組合
世の中のさまざまな分野で業務のIT化が進む中、マンションの管理組合はいまだアナログ性が非常に高いやり方で運営されています。連絡には回覧板や掲示板などを使用し、記録は紙媒体、管理会社との連絡は電話や郵便という管理組合がまだまだ少なくありません。
IT化の遅れは管理業務の手間をふやすだけでなく、住民同士のコミュニティ形成を阻害する要因にもなりかねません。マンション住人で組織する管理組合の労力を省き、住民間のコミュニケーションを活発化させるためにも、管理組合のIT化が求められています。
連絡・記録をIT化で簡単便利に
そういった事情を受け、近年は管理組合の業務に特化したITサービスが少しずつ普及しつつあります。たとえば、クラウドシステムを使えば資料の一元管理が可能です。
経理や避難訓練といったイベントの予定、長期修繕計画などメンテナンスに関する記録や予定・予算などを一元管理し、住民が閲覧できるようにすることで、簡単に情報を共有できるようになります。
また、これまで回覧板や掲示板に頼っていた住民への連絡をメールで行うシステムも登場しています。回覧板は不在であれば次の家に回すことができず、連絡に時間がかかりますし、掲示板は閲覧を確認できません。
メールの一斉送信ならそういった問題を解消できるため、理事会の出欠確認や日程調整、議事録等資料のやり取りなども円滑になります。
最近では、居住者に特化したSNSなどのコミュニティ機能や災害時の安否確認ができるサービスも登場しています。都市部のマンションでは特に、コミュニケーションの希薄さが住民間のトラブルにつながるケースが多いため、メリットの大きな機能の一つと言えます。
Webサービスでいつでも理事会
管理組合の業務を担うのは多くの場合、住民が持ち回りでその役に就く理事です。通常は1年ごとの持ち回りなどになっていますが、本業が忙しい人にとって理事会への参加は負担の大きい業務です。
特に大規模修繕などの大きな議題がある時には、頻繁に開く会議に時間をとられたり、資料の読み込みに労力を要したりすることもあります。理事それぞれの日程を調整して会議を開き参加するのは大変です。
時間や場所を気にせず、理事会の業務ができれば……そんな理事のニーズに応えてくれそうなものとして、理事会をWeb上で開くシステムが最近では登場しています。
大和ハウスグループの大和ライフネクスト社が提供するサービスでは理事会をWeb上で開くことができるため、理事はそれぞれが都合の良い時間に参加し、質疑応答や投票などを行うことができます。
理事会の採決や質疑応答は議事録として記録されるなどの機能もあり、スピーディーかつ的確な理事会運営が可能になると同社では導入のメリットをうたっています。
ITリテラシーの格差には注意も
管理組合のIT化は省力化につながりますが、その一方で住人のITリテラシー格差には注意が必要です。高齢者にはメールを使えない人も少なくないため、連絡事項が届かないことも考えられます。
クラウドを利用した情報閲覧やSNSへの参加も、パソコンやスマートフォンを使い慣れていない人にはハードルの高い作業ですし、そもそもそういった機器を保有していない世帯も少なくありません。
安価な機器の貸し出しや利用法のレクチャーなどがあれば、マンション内での普及が期待できるので、導入にあたってはそういった配慮が欠かせません。
まとめ
社会のさまざまな局面でIT化による省力化が進む中、マンションの管理においてもようやく、一般的なITサービスを導入する動きが見え始めています。
メールやSNSといったサービスはすでに社会のインフラとなっている感があるので、マンション管理においても急速に普及することが予想されます。