宿泊と賃貸の境界があいまいになる中、新たなビジネス形態として最近増えているものにサービスアパートメントがあります。ハウスメーカー大手のパナホームが2017年末に新たな施設をオープンするなど、業界でも注目を集めています。
すでに普及している欧米ではビジネスマンの利用がメインとされますが、民泊が新法で稼働日数の規制を受ける中、国内では外国人旅行者の受け皿としても期待が集まる新業態です。
パナホームも参入する「サービスアパートメント」とは
サービスアパートメントはその名の通り、清掃やフロントサービスが付属するアパートメントです。キッチンや洗濯機、冷蔵庫などの家具家電が設置されており、賃貸住宅の一種と見なされています。そのため、ほとんどの場合、旅館業法の適用は受けません。
ホテルと短期賃貸マンションの中間的な存在ですが、ホテルと異なるのは利用期間が長く、入居審査があることです。また、ウィークリーマンションとの違いは清掃等のサービスを提供することにあります。
日本では普及が遅れていることからあまり知られてはいませんが、住宅メーカー大手のパナホームが同市場に参入すると発表しています。2017年12月には東京で施設をオープンする予定です。物件の立地は東京メトロ半蔵門線 水天宮の近くと、東京観光には至便のエリア。外国人旅行者やビジネスマンの需要を狙っての展開と同社では発表しています。
充実のサービスで欧米ではビジネスマンが利用
サービスアパートメントは欧米など海外ではすでに広く普及しています。キッチンや家具家電が付属しているため、自炊するなど自宅と同じような暮らし方ができるのが利点です。
提供されるサービスの内容は施設ごとに異なり、一般的にはリネン交換やクリーニングサービスといった程度ですが、中にはフィットネスジムやスパなどが付属する物件もあります。
数週間~数か月という中長期の利用に適しているため、アッパー層のビジネスマンが長期出張などで利用するケースが多いようです。都心の一等地にあり、部屋も広めなので、家賃設定は通常、短期賃貸マンションより高めです。
空室確認から入居への流れ
サービスアパートメントを利用する際にはまず、ネットなどで空室を確認します。物件の詳細が気になるときには、実際に訪れて内覧することも可能です。
気に入った物件に空きがあれば、入居申込を行います。それを受けて、物件の管理者が入居審査を実施し、問題がなければ入居契約を結びます。
契約時には保証金の支払いを求められますが、一般的な賃貸住宅のような敷金や礼金は不要です。
民泊とのハイブリッドで新たな可能性も
サービスアパートメントの登場で注目されているのが民泊との兼業です。民泊については2018年から施行される新法の規制により、稼働の上限が年間180日までと定められました。
1年のうち最低でも半年は空室となるため、ビジネスとしては厳しいところですが、空いている間はサービスアパートメントとして稼働することができれば、新たな収益が得られます。
長くても2週間程度の利用が一般的な民泊に比べ、長期的な契約が見込めるので、安定的な収益が得られるのもサービスアパートメントの魅力です。経営面では民泊のように毎日のゲスト対応が不要であり、手間がかからないという利点も指摘されています。
まとめ
旅行者やビジネスにおける出張者が宿泊・賃貸施設に求める事柄はそれぞれ異なります。利用期間やコスト、必要とするサービスなどは人によりさまざまであり、サービスアパートメントは数週間~数か月、コストがかかってもある程度充実したサービスを希望する人にマッチする業態と言えそうです。
海外からの旅行者が増加する中、そういったニーズを抱える人は今後増えるとみられるので、国内でも普及が広がっていくかもしれません。