マンション・アパート経営者が知っておきたい言葉に「公開空地」というものがあります。
公開空地とは、マンションやアパートの敷地内にあって、一般に開放され、自由に通行または利用できる区域のことを指します。建築基準法に基づく総合設計制度の適用によって得られるもので、いわゆる「オープンスペース」の一つです。
この公開空地は、アパート経営者の皆さんにとって興味深いポイントです。以下に詳しく説明します。
アパート経営者にとっての公開空地とは?
上述の通り、公開空地には入居者以外の一般の人たちも通行・利用できます。アパートのオーナーにとっては、自分の敷地の中に公開空地があると清掃が必要になったり、電灯や通路の補修といった経費がかかったりとマイナスの面を考えてしまうかもしれません。
しかし公開空地を提供することで、アパート経営者には、ある恩恵が与えられます。それは「容積率の緩和」や「高さ制限の緩和」です。
敷地には、都市計画により建築物の容積率や高さの制限が定められています。その定めによりオーナーが希望する設計の建物が建てられない場合、公開空地を提供することで、特例的に緩和を受けられます。
こうした緩和を認める制度を「総合設計制度」といいます。
この制度は、面積が500平方メートル以上の土地に対して適用されます。また、建築物の容積率の割り増し限度は、基準容積率の1.5倍かつ200%以内と決まっています。
なお、公開空地については特定行政庁(建築関係の許認可や指示を出すことができる行政組織)が判断権を有するため、許認可申請が必要になります。
公開空地の活用は入居者の満足度にも
公開空地により容積率や高さ制限の緩和を受けられれば、同じ敷地により多くの住戸を設けられ、また建物は縦に長く、つまり階数を高くすることができます。
容積率は都市計画の「用途地域」で決まり、基本的に近隣エリアの容積率は同じになるため、公開空地を導入した建物は、ハード面で周辺物件との差別化が可能なのです。
また、公開空地を活用する目的は、設計上の制限緩和だけではありません。アパートの敷地内に公開空地によって緑豊かな場所を設置したり、子どもたちが遊べるスペースを設けたりすることができます。隣の敷地の建物にぴったり寄り付くようなアパートではなく、開放的なアパートとなるでしょう。
また、このような住環境のいいアパートは、通常の物件よりも家賃設定が高くなる傾向があります。公開空地は、収益性を高めるうえで意味を持つものなのです。
公開空地活用のデメリット
上述したような公開空地のメリットから、ある統計によると首都圏の超高層マンションの並ぶ地域では、84%のマンションで公開空地が設けられているそうです。
その一方で、公開空地にはデメリットもあります。一般の人々が自由に利用できるということは、公衆道徳をわきまえない利用者によるトラブルが発生するリスクも存在します。例えば、以下のような問題です。
・ 少年たちがサッカーをしており、ボールが飛んでこないかと危険な思いをしている。
・ 散歩している犬のフンが置き去りにされ、飼い主が放置している。
・ 深夜、不審者のような人がたむろしていて住民に不安を与えている。
こうした問題で住環境が悪化すれば評判が悪くなり、いずれ退去や家賃の下落といった事態にもつながりかねません。
なお、アパート経営者や入居者は、このような公開空地の利用者に対して制限を設けることはできません。ただし、快適な利用を勧める「規約」を作成することはできます。
看板などを立てることで、公開空地での不法な立ち振る舞い、またそれによって入居者や他の利用者が迷惑を被っている事実を伝え、モラルの改善を促すことです。
それでも問題が改善しない場合は、行政に相談するようにしましょう。行政の判断で、公開空地の利用制限を付加したり、公開空地の形態を制限したりすることも可能とされています。
公開空地によって生まれる交流
今回はアパート・マンション経営者にとって知っておきたい、公開空地のメリットやデメリットを説明しました。
近年、地域の活性化に公開空地が利用され、新たな存在価値を生み出しています。例えば、夏の盆踊り大会や秋の収穫祭など、賃貸マンションの入居者と近隣住民の「接点」に公開空地のスペースが活用され、交流のきっかけになっているようです。
こうした事例も念頭に置きながら、公開空地を活用することを検討してみてはいかがでしょうか。