アパート経営について、未経験者の多くは「物件を購入してしまえば、自動的に家賃収入が入ってくるので楽だ」というイメージを持っているようです。しかし実際にアパート経営してみると、自動的には家賃が入ってこないことを痛感します。
今回は大家さんが実感するアパート経営の難しさについて、経験者の話も踏まえながら紹介します。
アパート経営 4つの「難しい」ポイント
アパート経営のハードルは、大別すると「物件購入」と「経営継続」の2つです。物件購入というハードルは決心さえできれば短期間で乗り越えられますが、経営は購入後から長期間にわたる行為です。そのなかで大家さんが遭遇する困り事や難しい点は、次の4つが挙げられるでしょう。
1. 入居者募集
2. 入居者対応
3. 入居者退去対応
4. 修理・修繕
1. 入居者募集
アパート経営は入居者がいなければ成立しません。空室が発生しない仕組みをつくれれば苦労はありませんが、退去は入居者の都合で行われます。空室期間を短縮するための入居者募集は、大家さんにとっての重要な業務です。
・不動産仲介会社の選択
賃貸物件の経営者自身が入居者募集の広告を出すことは、ネット環境が整備された今では珍しくなくなりました。それでも不動産仲介会社に依頼する大家さんが大半です。仲介会社を介して入居者候補が応募してくるのですから、仲介会社との関係性は非常に重要です。
・効果的な広告やインターネットを利用した物件紹介
仲介会社に入居者募集を依頼するだけでなく、大家さん自身がインターネット上で物件の宣伝・広告・募集に乗り出すこともあります。特に、ネットリテラシーの高い大家さんはインターネットを利用しているケースがあります。逆の言い方をすると、ネットが得意ではない大家さんは、効果的な宣伝などが行えず苦労することもあります。
・入居者候補の属性
属性とは、性別・年齢・収入・家族構成などの入居者候補を特徴づける要素です。なかでも「高齢者」や「低所得」といった属性は、孤独死や家賃滞納のリスクにつながるため、大家さんにとっては避けたい属性でしょう。
2. 入居者対応
大家さんにとって煩わしいことのNo.1は、入居者対応です。何の前触れもなく突然、大家さんを悩ませることがあります。問題の内容は多種多様であり、この問題はアパート経営を続ける限りずっと付きまといます。
・値下げ交渉・家賃交渉
家賃収入はアパート経営の根幹です。建物の経年劣化に伴い、家賃が低下するのはある程度、折り込み済みですが、想定以上の家賃値下げは経営に大きな影響を与えます。
・孤独死・事故
事故や自殺による孤独死は、アパート経営に大きな影を落とします。自殺のあった部屋は、「心理的瑕疵(かし)物件」と呼ばれます。入居者の心理としてはできるだけ避けたい部屋となり、空室を避けようとすると家賃のディスカウントが必須です。また、事故物件のリフォームには多額の費用を要します。発見が遅れれば遅れるほどリフォーム費用は高額になります。
・家賃滞納
家賃滞納はアパート経営を直撃します。不動産所得の計算では、支払期日に入金がなくても家賃を売上計上しなくてはならないため、キャッシュフローは大きく低下します。また、滞納家賃の回収の手間も大きな痛手です。
・契約違反(無断転貸、用途違反、ペット、住人数など)
契約違反の内容は多岐にわたります。無断転貸や無断譲渡、住居に限定していたのに勝手に店舗・事務所として使用していたり、ペット不可物件であるにもかかわらずペットの飼育を行ったりします。また当初入居者が1名だったのが、無断で2名、3名となるケースもあります。
・入居者同士、入居者と近隣住民とのトラブル
ゴミ出しなどが原因で、入居者同士や入居者と近隣住民との間でトラブルとなることがあります。ゴミ出しの場合は大家さんの管理対象となるので、入居者へのお願いや指導を行う必要がありますが、管理対象ではない原因の場合はどこまで介入していいのか迷うところです。
・水漏れ
配管系の劣化やキッチンの水道の締め忘れなどが原因で、水漏れ事故が発生することがあります。平屋ではなく、2階、3階建てのアパートの上階で水があふれ出すと階下の部屋が被害を受けます。
3. 退去対応
アパート経営では、同じ入居者が永遠に住むということはほとんどありません。退去する日がいつかやってきます。退去時の困り事として、「いの一番」にあがるキーワードは「原状回復」です。
民法第598条には「借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる」との規定があります。これを受けて過去、借りた時点の状態に復帰させたい貸主と、費用負担を少しでも抑えたい借主の間でのトラブルが頻発しました。それを受けて、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というガイドラインを定めていますので、これをチェックしておくと良いでしょう。
4. 修理・修繕
計画的な修理・修繕は、経年劣化による賃料の低下を防止する重要な対策です。しかし、多額の費用を要するため、実施するタイミングに悩みます。計画的な修理・修繕には、計画的な費用の積立が必要です。一般的に新築物件では修理・修繕費の発生もあまりなく、減価償却費という表面上の費用が経費計上されるため、キャッシュフローが大きくプラスになります。
キャッシュフローが潤沢な時期に修理・修繕費の積立ができれば、計画的な修理・修繕が将来、可能になるでしょう。多くの大家さんはこれを意識せずにキャッシュフローを消費してしまいがちで、いざ修理が必要になったときに資金がなくて困るケースがあるので注意しましょう。
今回は、アパート経営で直面する「困り事」について取り上げました。アパートの大家さんは、決して手放しでできる稼業とはいえません。賃貸物件を入手した時点で苦労が終わるわけではなく、入手したときからアパート経営がはじまります。今回取り上げたトラブル対策の準備を怠らず、アパート経営者として日々、研鑽するよう心がけましょう。