不動産業界の「2022年問題」をご存知でしょうか。これは2022年に「生産緑地法」という法律が解除され、それによって住宅地価が暴落するといわれている問題です。そこで今回は、この生産緑地法問題の概要と、アパート経営にもたらす影響について考えてみましょう。
「生産緑地」と「2022年問題」について
「生産緑地」とは、大都市圏内の「市街化区域」内にある農地のことをいいます。住宅地にありながら農地として扱われており、現在、東京・名古屋・大阪の三大都市圏を中心に、約1万ヘクタール以上、存在しているといわれています。
1991年、「生産緑地法」は改正され、市街化区域内で生産緑地地区に指定された土地の所有者は、そこを農地として管理することが義務付けられました。生産緑地に指定されると、相続税・固定資産税などの税金が付近にある宅地よりも安くなるメリットがあります。具体的には、生産緑地の評価は宅地の65~90%も減価されています。しかし、生産緑地に指定された土地には建物を建てられないというデメリットもあるのです。
改正生産緑地法では、「生産緑地の指定から30年を経過したら所有者は市町村に対して買い取りの申し出を行うことができ、市町村は特別な事情がない限り時価で買い取らなければならない」ことが定められました。
同法が適用されたのは1992年のことです。つまり、その30年後の2022年を境に、地主たちから一斉に買い取りの申し出があるのではないかと予想されています。しかし、財務的理由から、市町村がそのすべてを買い取るというのは難しく、不動産開発会社などが購入して宅地化などが一気に進むのではないかと考えられています。これが生産緑地法による2022年問題です。
2022年の指定解除で何が起きるのか
2022年以降、生産緑地に対する営農義務が外れ、買い取り申し出ができる基準日が到来すると、地主はそのまま指定を継続するか(農地として使い続けるか)、買い取りを申し出るかを選択することになります。前述した通り、生産緑地を開発業者が購入することになれば宅地化が進むことが予想されます。
人口減少社会で生産緑地の宅地化が一気に進めば住宅供給はさらに過剰となり、需給バランスが崩れて周辺の住宅価値が暴落するのではと考えられています。
そのため国は、生産緑地の転用対策として「都市緑地法等の一部を改正する法律案」を、2017年2月10日に閣議決定しました。そのなかには、生産緑地に直売店や農家レストランなどの設置を可能にするなどの要件緩和が盛り込まれ、生産緑地の急速な宅地転用を防ぐ方針が打ち出されています。
アパート経営にもたらす影響は?
アパート経営をはじめようとする人、すでにアパート経営をしている人たちは、これに対してどう対応すれば良いのでしょうか。
土地に賃貸住宅を建てると、固定資産税が1/6に軽減されるという税制優遇処置があるため、生産緑地の指定が外れた土地のうち、ある程度は投資用の賃貸アパートなどに転用されるでしょう。そして、供給過剰状態になれば家賃下落などの影響が考えられます。
これから投資物件の購入を検討している人は、しっかりと現地調査を行う必要があるでしょう。周辺のアパートやマンションの数だけでなく、近隣に生産緑地がないかを把握しておくことが大切です。都心や駅に近い生産緑地であればあるほど、賃貸アパートになる可能性は高いといえます。
現在、物件を所有している人は、物件周辺地域に生産緑地はないかなどを調査し、将来的に供給過剰が考えられるならば早期売却も検討しておきましょう。もちろん、そのまま農業を続ける地主もいると思いますが、その子どもたちは家業を継がずに企業に就職しており、自分の代で農家をやめる決断をしている地主も少なくありません。
生産緑地面積が多い地域は、都内では町田市、八王子市、立川市などが挙げられます。都市部は2030年まで人口がふえると予想されている一方で、都市部以外は2020年をピークに人口が減少しはじめます。そうしたなか、生産緑地の問題がどのような影響をもたらすのか、不動産投資家であれば今後の動向に注目したいところです。